遺言執行者とは?選任するメリットやデメリット、選任方法を解説

最終更新日 2025年3月31日
遺言執行者とは、遺言者の意思を実現するために欠かせない人物です。
しかし、具体的な役割や選任の必要性については、多くの人が疑問を抱いています。
この記事では、遺言執行者の役割や選任のメリット・デメリット、適切な選任方法を詳しく解説します。
遺言書作成を検討している方や、相続手続きの円滑化を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。
遺言執行者とは
遺言執行者は、遺言者の死後、その内容を実現するために必要なあらゆる手続きを行う権利と義務を持つ人を指します。
遺言書に記載された財産の分配や相続手続きの実行など、遺言者の最後の意思を実現することが主な役割です。
遺言執行者は、相続人の代理人としてではなく、遺言者の代理人として行動します。
そのため、相続人の意見の相違や対立があっても、遺言者の意思を尊重した相続が可能です。
また、遺言執行者は、相続手続きの円滑化や遺言内容の実現に大きく貢献します。
特に、複雑な相続案件や相続人間の関係が良好でない場合には、欠かせない存在です。
遺言執行者になれる人
遺言執行者になれる人には、相続人や受遺者(遺贈を受ける人)、第三者、法人など、幅広い選択肢があります。
たとえば、家族や親族、信頼できる友人、弁護士や司法書士などの法律の専門家、信託銀行などです。
ただし、未成年者と破産者はなれないため注意が必要です。
選任に当たっては、以下を考慮します。
- 相続手続きの複雑さ
- 相続人間の関係性
- 遺産の規模
遺言者は、信頼できる人物や専門知識を持つ人を遺言執行者として指定できます。
また、選任された人物が遺言執行者の役割を引き受ける意思があるかどうかも、事前に確認しておくべきです。
遺言執行者の義務
遺言執行者には、法律によって定められた義務が3つあります。
義務 | 概要 |
遺言の内容を相続人に通知する | 遺言執行者は、遺言執行の任務を開始したら、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければいけません。 |
相続財産の目録を作成し、相続人に交付する | 遺言執行者は、相続財産の全容を把握し、その目録を作成して相続人に提供する必要があります。 |
遺言の内容を実現するために必要な一切の行為を行う | 相続財産の管理や遺産分割の実行、必要な登記や名義変更の手続きなどが含まれます。遺言執行者は、遺言者の意思を忠実に実現するよう努めなければいけません。 |
遺言執行者はこれらの義務を適切に果たせば、遺言者の意思を実現できるほか、相続手続きをスムーズに進められます。
遺言執行者を選任するメリット
ここでは、遺言執行者を選任するメリットを詳しく解説します。
スムーズに相続できる
遺言執行者を選任すると、相続手続きがスムーズに進むメリットがあります。
遺言執行者は、遺言の内容に従って相続手続きを進める権限を持っているため、相続人全員の同意がなくても手続きを進められます。
たとえば、相続人の中に遠方に住んでいる人がいる、相続人間の関係が良好でない場合でも、中立的な立場で手続きを進めることが可能です。
これにより、相続人間の意見の対立による手続きの遅延を防げます。
また、相続財産の管理や分配、必要な登記や名義変更の手続きなど、相続に関する一連の作業を一括で実行可能です。
さらに、遺言執行者が専門家(弁護士や司法書士など)の場合は、専門知識を活かして複雑な相続案件にも適切に対応できます。
相続税の申告や不動産の名義変更を円滑に進められるのがメリットです。
子の認知が可能
遺言執行者を選任すると、遺言による子の認知が可能になるメリットがあります。
子の認知とは、法律上の親子関係を認めることです。
通常、婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)は、父親との法律上の親子関係を確立するために認知しなければいけません。
遺言による認知は、遺言者の死後に効力を生じます。
しかし、遺言書に認知の記載があるだけでは不十分で、その内容を実現するための手続きが必要です。
ここで重要になるのが、遺言執行者の役割です。
遺言に記載された認知の内容に基づいて、必要な手続きを行います。
具体的には、認知の届出を行政機関に提出したり、戸籍の訂正を申し立てたりします。
これらの手続きは専門知識が必要なため、法律に詳しい人物だと特に有効です。
遺言による認知は、遺言者の生前に認知できなかった場合や、認知の事実を公にしたくなかった場合などに適しています。
相続人を廃除できる
遺言執行者を選任すると、特定の相続人を相続から廃除できるメリットがあります。
これは、相続人の廃除と呼ばれる手続きです。遺言者が生前に重大な非行を受けた相続人を除外できます。
ただし、相続人の廃除は、遺言書に記載するだけでは効力が生じません。
家庭裁判所での審判が必要となり、その申立てを行う必要があります。
遺言執行者は、遺言内容に基づいて家庭裁判所に廃除の申立てを行い、必要な証拠や資料を提出しなければいけません。
相続人の廃除は、遺言者の意思を尊重し、不適切な相続人から財産を守るための手段です。
しかし、実行には慎重な判断が欠かせません。
遺言執行者は、遺言者の意思を正しく理解し、法的な観点から適切に手続きを進める責任があります。
相続財産の勝手な処分を防げる
遺言執行者を選任すると、相続財産の勝手な処分を防げるメリットがあります。
遺言執行者は、遺言の効力が発生した時点で相続財産の管理権を持ちます。
これにより、相続人が独断で相続財産を処分する行為を防ぐことが可能です。
遺言執行者は、相続財産の目録を作成し、適切に管理する義務があります。
管理には、不動産や預貯金、有価証券などの相続財産全般が含まれます。
遺言執行者が相続財産を管理すれば、相続人による不適切な処分や散逸の防止が可能です。
たとえば、相続人の1人が遺言の内容に不満を持ち、勝手に相続財産を処分しようとしても、遺言執行者がその行為を阻止できます。
また、相続財産の中に事業用資産が含まれる場合、遺言執行者が適切な管理と承継を担当すれば、事業の継続性を確保可能です。
さらに、遺言執行者が専門家(弁護士や税理士など)の場合は、相続税の申告や納付に関しても適切な対応ができます。
これにより、相続財産の価値を最大限に保全しつつ、法的な義務を確実に果たせます。
遺言執行者を選任するデメリット
ここでは、遺言執行者を選任するデメリットを詳しく解説します。
相続に関する知識が必要
遺言執行者を選任する際のデメリットは、相続に関する一定の知識が必要になる点です。
遺言執行者は、遺言内容を実現するためにさまざまな手続きを行う必要があり、そのためには相続法や税法、不動産登記など、幅広い知識が求められます。
たとえば、相続税の申告や納付、不動産の名義変更、預貯金の払い戻しなど、相続に関連する手続きは多様です。
これらの手続きを適切に行うためには、関連する法律や制度への理解が欠かせません。
また、遺言の解釈や遺産分割の方法も、法的な知識が必要となる場合があります。
遺言の文言が曖昧であったり、相続人間で解釈が分かれたりした場合、遺言執行者はその調整を行わなければいけません。
相続人からの選任はトラブルの原因になりやすい
相続人の中から遺言執行者を選任すると、相続に関するトラブルの原因になりやすいです。
理由は、遺言執行者の公平性や中立性に疑問が生じやすいためです。
たとえば、複数の相続人がいる場合、その中の1人を遺言執行者に選任すると、他の相続人から不公平だと指摘される可能性があります。
遺言執行者が自分に有利な形で遺産分割を進めているのではないか、と疑念を持たれるかもしれません。
また、遺言執行者となった相続人は、他の相続人よりも多くの情報を持つことになるため、情報の非対称性(情報の偏り)が生じます。
これにより、他の相続人は不信感を抱きやすくなるでしょう。
さらに、遺言執行者となった相続人が、他の相続人との間で利害関係が対立する場合もあります。
弁護士などに依頼した場合は費用がかかる
弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者として選任した場合、その報酬が必要になるデメリットがあります。
費用は相続財産から支払われるため、相続人が受け取る相続財産は減少します。
専門家への報酬は、相続財産の規模や相続手続きの複雑さによって異なりますが、一般的に高額になりやすい傾向です。
たとえば、相続財産が数千万円規模の場合、遺言執行者の報酬は数十万円から数百万円ほどかかる場合があります。
また、遺言執行の過程で予期せぬ問題が発生し、追加作業が必要になった場合は、さらに費用が増加する可能性があるため注意が必要です。
相続人間で争いが生じて調停や訴訟が必要になると、その対応にかかる費用も発生します。
さらに、遺言執行者の報酬以外にも、不動産の名義変更にかかる登記費用や、相続税の申告に必要な不動産鑑定費用など、相続手続きに関連するさまざまな費用が発生します。
遺言執行者を選任したほうがよいケース
ここでは、遺言執行者を選任したほうがよいケースを解説します。
子の認知をしたい場合
遺言による子の認知を希望する場合は、遺言執行者の選任が欠かせません。
遺言による認知は遺言者の死後に効力を生じるため、実現には遺言執行者による適切な手続きが必要です。
遺言執行者は、認知の届出を行政機関に提出したり、必要に応じて戸籍の訂正を申し立てたりなど、法的な手続きを確実に進める役割を担います。
特に、認知の事実を公にしたくない場合や、遺言者の生前に認知できなかった事情がある場合など、デリケートな状況下での認知にも対応できる点がメリットです。
相続人の廃除を行う場合
相続人の廃除を行う場合は、遺言執行者を選任すべきです。
相続人の廃除には家庭裁判所での審判が必要になり、遺言執行者はその申立てや必要な証拠・資料の提出を行います。
この手続きは法的に複雑で専門知識が欠かせないため、弁護士などの法律の専門家が適任です。
また、相続人の廃除は他の相続人との間で感情的な対立を生む可能性も考慮すると、法律の専門家が遺言執行者に最適といえるでしょう。
家族に相続手続きの負担をかけたくない場合
家族に相続手続きの負担をかけたくない場合も、遺言執行者を選任すべきです。
相続手続きには専門知識や多くの時間が必要になるため、遺族にとって大きな負担になる可能性があります。
しかし、遺言執行者を選任すれば、相続財産の調査や目録の作成、遺産分割の実行、必要な登記や名義変更の手続きなど、相続に関する一連の作業を一括で行うことが可能です。
これにより、相続人は煩雑な手続きから解放され、自身の日常生活や仕事に集中できます。
遺言執行者を選任する方法
ここでは、遺言執行者を選任する方法を詳しく解説します。
遺言書で遺言執行者を指定
遺言書で遺言執行者を指定する方法は、もっとも一般的な選任方法です。
遺言者が信頼する人物や専門家を遺言書に明記します。
たとえば、私は○○○○を遺言執行者に指定するといった文言を記載する必要があります。
この方法のメリットは、遺言者の意思が明確に示される点です。
また、複数の遺言執行者を指定できるため、負担の分散や異なる専門性の組み合わせができます。
遺言書で第三者に遺言執行者を決めてもらう人を指定
遺言書で第三者に遺言執行者を決めてもらう人を指定する方法は、遺言者が具体的な人物を指名できない場合に有効です。
たとえば、「私の遺言執行者は、○○○○が指定する者とする」といった文言を記載します。
この方法のメリットは、遺言を作成した時点で具体的な遺言執行者を決める必要がない点です。
将来の状況変化に柔軟に対応できる点や、専門的な判断を要する場合に適切な人物を選任できる点もメリットといえるでしょう。
ただし、指定された第三者が適切に遺言執行者を選任できるかどうかが重要です。
家庭裁判所で遺言執行者の選任申し立て
家庭裁判所で遺言執行者の選任申し立てを行う方法は、遺言書で遺言執行者が指定されていない場合や、指定された遺言執行者が任務を遂行できない場合に用いられます。
相続人や利害関係人が家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が適切な人物を遺言執行者として選任するのが一般的です。
この方法のメリットは、中立的な立場の裁判所が選任を行うため、公平性が確保される点です。
また、専門知識を持つ第三者が選任される可能性が高く、複雑な相続案件にも対応できます。
ただし、手続きに時間がかかる可能性があるため、迅速な対応が求められる場合は注意しなければいけません。
まとめ
遺言執行者の選任は、スムーズな相続手続きと遺言者の意思の実現のために欠かせません。
特に、子の認知や相続人の廃除、複雑な相続案件の場合には大きな意味を持ちます。
選任方法には、遺言書での指定や第三者による指定、家庭裁判所での選任などがあります。
それぞれの状況に応じて、適切な方法を選択してください。
ただし、相続に関する専門知識と経験が必要になるため、適任は弁護士などの法律の専門家といえるでしょう。
弁護士法人ひいらぎ法律事務所では、遺言作成から遺言執行までの一貫したサポートを提供しています。
複雑な相続案件にも対応できる体制を整えているため、スムーズな相続手続きを希望する場合は、お気軽にご相談ください。
最終更新日 2025年3月31日