相続放棄申述書とは?書き方や入手場所・必要書類などを詳しく解説
「相続放棄をしたいけど、どうしたらよいか分からない」
そのようにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは相続放棄申述書の書き方やどこで入手できるのか、そして相続放棄申述書と一緒に提出しなければならない必要書類について解説します。
相続放棄とは
人は死亡によって自己の財産に関する一切の権利義務を失いますが、それらの権利義務は民法が定める一定範囲の親族(法定相続人)に当然に承継されることになります(民法896条)。
しかし、法定相続人は、相続放棄をすることで、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければなりません(民法941条1項)。
相続放棄は、相続財産が債務超過の状態にある(プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多い)場合になされることがほとんどです。
なぜなら、相続放棄は被相続人(亡くなった人)が保有していた全ての遺産の相続をしなくても済むという制度になりますので、相続放棄をすれば、被相続人が保有していたプラスの財産を取得できない代わりにマイナスの財産の取得も拒否することができるからです。
ただ、被相続人や他の相続人とこれまで親戚付き合いがほとんどないことから、「遺産をもらわなくてもよいから一切の関わりをしたくない」と考えて相続放棄を選択する人もいます。
相続放棄申述書の入手方法と書き方
相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、相続放棄申述書を提出することによって行います。
「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」がどの家庭裁判所になるかは、最寄りの家庭裁判所に問い合わせるとよいでしょう。
相続放棄申述書がどこでもらえるかですが、最寄りの家庭裁判所の窓口で無料配布されているほか、裁判所が公開してますので、のちほど検索してみてください。
ここで注意しなければならない点は、成人用の書式と未成年者用の書式のURLが違っているということです。
相続放棄申述書の書式自体は全く同じものですが、申述人が未成年者の場合には法定代理人の欄も記入しなければならないため、記入例の説明が違ったものになっています。
なお、申述人が未成年者であるときの法定代理人は、通常は親権者である父母になりますが、親権者も相続人であるとき、あるいは相続人である未成年者が複数人いるときには注意が必要です。
ある人が亡くなり、相続人として妻、子A、子Bがいるケースで考えてみます。
妻は、子A、子Bの法定代理人親権者母です。
妻自身及び子A、子Bの3名が全員相続放棄をするのであれば、妻は子A、子Bの法定代理人として子A、子Bを代理して相続放棄の申述をすることができます。
これに対し、妻が相続し、子A、子Bが相続放棄をする場合には、妻と子A、子Bの利益が相反することなるため(子A、子Bが相続放棄をすることで妻が取得する遺産が増えるため)、妻は子A、子Bの代理をすることができず、子A、子Bのために特別代理人の選任申立てをしなければなりません(民法826条)。
また、妻と子Aが放棄し、子Bが相続する場合には、子Aと子Bの利益が相反することになるため(子Aが相続放棄をすることで子Bが取得する遺産が増えるため)、やはり特別代理人の選任申立てが必要です。
結局のところ、未成年者とともに法定代理人もまた相続人であるときは、法定代理人と未成年者である相続人全員が相続放棄をする場合に限って、法定代理人は未成年者全員を代理して相続放棄の申述をすることができるということになります(法定代理人が後見人であるケースにつき、最高裁判所昭和53年2月24日判決)。
なお、法定代理人が利益相反行為をすると、無権代理行為(民法113条)として無効となりますが、最高裁判所昭和46年4月20日判決は、未成年者が成人した後に追認すればさかのぼって有効になると判断しています。
相続放棄申述書の必要書類
【共通するもの】
1、被相続人の住民票除票又は戸籍附票
2、申述人(放棄する人)の戸籍謄本
【申述人が、被相続人の配偶者の場合】
3、被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
【申述人が、被相続人の子又はその代襲者(孫、ひ孫等)(第1順位相続人)の場合】
3、被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
4、申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
【申述人が、被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第2順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
3、 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
4、 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
5、 被相続人の直系尊属に死亡している人(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
【申述人が、被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
3、 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
4、 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
5、 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
6、 申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
(以上、裁判所のホームページより引用)
相続放棄申述書を作成するにあたってお勧めの方法
相続放棄申述書を作成するにあたってお勧めの方法は、次のとおりです。
- 相続放棄申述書と記入例を裁判所のホームページからプリントアウトする。
- 記入例を見ながら、相続放棄申述書に実際の情報を「鉛筆で」記入する(作成年月日は空欄のまま、押印はしないでください)。
- 必要書類を集める(この時点で何が必要か分からなければ、最寄りの家庭裁判所に電話し、「相続放棄申述書の必要書類が分からないので窓口で教えてほしいのですが、いつお伺いしたらよろしいですか」と言って訪問日時を予約してください)。
- 相続放棄申述書(鉛筆書きし、日付を空欄にし、押印しないもの)と必要書類を完璧にしたら(自分なりに完璧だと思う程度で構いません)、最寄りの家庭裁判所に電話し、「相続放棄申述書を書き上げ、必要書類もそろえたので、提出前に過不足がないかどうかを確認してほしいのですが、いつお伺いしたらよろしいですか」と言って訪問日時を予約してください。間違っている箇所の指摘を受けたら、その場で消しゴムで消して鉛筆で訂正し、訂正後のものを確認してもらってください。
- 家庭裁判所の窓口で確認後、鉛筆書きした相続放棄申述書(ここで日付を書き込むこと)をコンビニ等でコピーし、コピーしたものに押印してください。
- 押印した相続放棄申述書と必要書類を全てコピーし(自分用の控えにするため)、原本を家庭裁判所に持参する(持参する家庭裁判所は、最寄りの家庭裁判所ではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります)。
なお、原本を持参する前に家庭裁判所に電話し、切手の券種と枚数を確認してください(切手の券種と枚数は、それぞれの家庭裁判所によって微妙に違います。印紙は800円で全国共通です)。
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が遠方で相続放棄申述書を持参できないときは、郵送することもできます。
郵送する際は、受取確認ができるレターパックプラスなどを利用するのがよいでしょう(受取確認は自分でネットからできますので、家庭裁判所に到着後、1週間くらいしたら電話して受付されたかどうかを確認すべきです)。
相続放棄申述書が無事受付されると、家庭裁判所から照会書が郵送されますので、それに必要事項を記入して返送してください。
何事もなければ、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が郵送されますので、大切に保管しておいてください。
相続債権者等から何か言われたときは、相続放棄申述受理通知書のコピーを郵送すれば、その後はもう何も言われなくなります(相続債権者の中には相続放棄申述受理証明書がほしいと言うところもありますが、「証明書がほしければ、自分で申請して取ってください」と言って断ればよいでしょう)。
まとめ
このように、相続放棄申述書の書き方やどこでもらえるのか、そして相続放棄申述書と一緒に提出しなければならない必要書類には上記のような注意点があります。
相続放棄についてお困りのときは、最寄りの家庭裁判所までご相談ください。
最終更新日 2024年7月6日
最終更新日 2024年7月6日