相続放棄のデメリットは?トラブル防止の注意点や判断のポイントを解説

相続放棄のデメリット・トラブル防止

最終更新日 2025年3月22日

配偶者や親などの身内が亡くなった場合、亡くなった方(被相続人)の財産を相続することになります。

被相続人の財産は必ず相続しなければならないというわけではなく、負の遺産が多い場合や相続でトラブルが起こりそうな場合は放棄することも可能です。

ただし、相続放棄にはさまざまなデメリットがあり、思わぬ損失を招いてしまうリスクもあるため注意する必要があります。

この記事では、相続放棄のデメリットや注意点、判断基準などを紹介します。

相続放棄のデメリット 

相続放棄のデメリット相続放棄を検討する場合は、そのデメリットやリスクについて知っておくことが大切です。

ここでは、相続放棄にどのようなデメリットがあるのか解説します。

財産の相続ができなくなる

相続放棄のデメリットは、相続権が失われることにより、被相続人の財産が一切相続できなくなることです。

すべての相続財産を放棄するため、マイナスの財産だけでなく、プラスの財産も相続できません。

たとえば、被相続人と同居していたとして、住んでいた家が被相続人の名義だった場合、相続放棄をするとその家に住むことができなくなります。

家電や家具などの家財も、被相続人の物であれば勝手に持ち出すこともできず、価値が高い私物の形見分けもできません。

財産相続を検討する際には、プラスの財産も相続できないことを念頭に置いたうえで判断することが大切です。

放棄してしまうと撤回できない

相続放棄には、一度相続を放棄してしまうと、後から撤回したくなっても撤回できないデメリットもあります。

相続放棄を撤回できない理由は、相続放棄を認めてしまうと、相続関係が複雑化して他の相続人が損害を被る可能性があるためです。

特別な事情があれば家庭裁判所が相続放棄の取り消しを受理するケースもありますが、詐欺や事件性があるなど非常にまれなケースとなります。

ちなみに、相続放棄の申述が裁判所に受理されるまでには1か月程度かかりますが、裁判所が受理する前であれば、取下げることが可能です。

後順位の相続人に負担をかける場合がある

相続放棄を行った場合、相続権は次の順位の人に移ることになるため、後順位の人に迷惑や負担をかけてしまう可能性があります。

相続の順位が変更されても、その事実が新たな相続人に通知されることはなく、次の順位の人は知らない間に負債を負う可能性があります。

そのため、新しい相続人が負債を負った事実を知るのは、被相続人が負債を抱えていた金融機関などから負債の通知が届くタイミングです。

相続放棄をした場合に、後順位の人に何も言わないまま放置しているとトラブルに発展する可能性が高くなります。

そうならないためにも、次の順位の人に対して、相続放棄をした旨を事前に説明しておくことが望ましいでしょう。

非課税枠が使えなくなる

相続人が相続放棄をした場合、生命保険の非課税枠が使えなくなるデメリットがあります。

ただし、受取人が最初から相続人以外の場合は影響を受けません。

被相続人が死亡保険を契約していた場合、受取人が相続放棄をしても、死亡保険金を受け取ることは可能です。

この場合、受け取った死亡保険金はみなし財産とみなされ、相続税の課税対象となります。

生命保険には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられていますが、この非課税枠を使えるのは相続人のみです。

そのため、相続放棄をすると相続人ではなくなるため、生命保険の非課税枠も使えなくなります。

全員が放棄すると先祖から受け継いだ資産が失われる

相続人全員が相続放棄をすると、先祖から受け継いだ資産が失われてしまい、将来的に後悔する可能性があります。

この場合、まずは相続財産管理人による整理が行われ、最終的に引き取り手がいない財産が国家に帰属します。

たとえば、歴史の長い土地や貴重な骨董品などを被相続人が所有していた場合、相続人全員の放棄によりこれらの財産が国にわたる可能性があるということです。

文化的または感情的価値の高い資産を所有していた場合、相続放棄によって金銭以上のものを失う可能性もあります。

管理義務が残る場合がある

相続放棄のデメリットは、相続を放棄した後も財産の管理が必要になるケースがあることです。

相続放棄において相続財産の占有者は、引き続きその財産を自己の財産と同一に注意し、保存しなければならないと法律で定められています。

保存義務を免れるためには、家庭裁判所に相続財産清算人の選定を申し立てる必要があります。

たとえば、被相続人の名義の家に住んでいた場合に、財産放棄をした後も相続財産清算人に家を引き渡すまでの期間は家の管理が必要です。

ただし、相続放棄の時点で相続財産を占有していない状況にあれば、管理業務が課されることはありません。

相続放棄を行う場合の注意点

相続放棄の注意点相続放棄を行う際にはさまざまな注意点があり、トラブルを防ぐためにも事前に確認しておく必要があります。

ここでは、相続放棄を行う場合の注意点を解説します。

相続放棄には有効期限がある

相続放棄は、自己のために相続が開始されたことを知ってから3か月以内に行う必要があります。

この3か月の期間のことを熟慮期間といいます。

相続が開始されたことを知った後であれば、相続放棄の3か月という期限を知らなくても、期限が切れると相続放棄はできなくなるため注意しましょう。

なお、3か月というのは手続き完了の期間ではなく、申述書の提出期限です。

3か月以内に申述書などの書類を家庭裁判所に提出していれば、3か月を超えて審査が続いても問題ありません。

相続財産に手をつけると放棄できない

相続財産に手をつけてしまうと、単純承認したものとみなされてしまい、相続放棄ができなくなります。

単純承認とは、被相続人の相続財産を無条件ですべて相続することで、相続開始を知ってから3か月以内に何もしない場合も単純承認になります。

以下のように、被相続人の財産に手をつけると単純承認とみなされるケースがあります。

  • 不動産や車の名義変更をした
  • 被相続人の預貯金を受け取った
  • 経済的な価値のある遺品を持ち帰った
  • 遺産分割協議を行った
  • 被相続人の債務を支払った

一方、被相続人の財産から葬儀費用を支払うことや、老朽化した倒壊リスクのある建物を修繕するなどの行為は単純承認には該当しません。

生前の相続放棄はできない

相続放棄ができるのは「相続が発生してから3か月以内」という法律があるため、相続放棄は被相続人の生前に行うことはできません。

生前から被相続人が負債を抱えていることを知っていて、相続放棄をしたいと考えていた場合に、念書を作成しても法的効力はないため注意が必要です。

親の負債が多くて悩んでいる場合は、生前に債務整理をして借金を減らしておくことも一つの方法です。

家庭裁判所での手続きが必要

相続放棄をするためには、家庭裁判所での手続きが必要となり、書類の用意や手続きに時間や手間がかかる可能性もあります。

相続放棄申述書は、被相続人が住んでいた最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する必要があります。

遠方の場合、窓口での手続きを希望すると交通費がかかることもあります。

裁判所への申立ては郵送で受け付けてもらえますが、期限が迫っている場合だと期限までに遅れてしまう場合もあるため注意しましょう。

また、郵送の場合には、期限が来る前に申述書が届いているかどうかを裁判所に確認することも大切です。

相続放棄の手続き自体は自分で行うことも可能ですが、専門家である弁護士に依頼すると手間もかからずスムーズです。

相続放棄の判断基準

相続放棄の判断基準相続放棄で失敗しないためにも、放棄をする判断基準を知っておきましょう。

ここでは、相続放棄の判断基準を解説します。

資産より負債が大きい場合

相続放棄は、被相続人が遺した資産と負債を比較した場合に、負債が大きい場合に選択されるケースが多いです。

相続放棄すると、被相続人の資産を相続することはできない一方、負債の相続も不要となり、自己の財産から負債の支払いを行わなくて済みます。

なお、資産と負債の全容がわからない場合は、限定承認を選択するのも一つの方法です。限定承認とは、被相続人のプラスの資産の範囲内で負債を清算し、財産が余ればそれを引き継ぐというものです。

限定承認は相続人にとって有用な制度ですが、相続人全員の手続きが必要となることや、清算手続きに手間がかかるなどのデメリットもあります。

限定承認した方がいいかどうかは、相続問題に強い弁護士に相談してアドバイスをもらうことをおすすめします。

資産の維持コストが大きい場合

負債がなくても資産の維持コストが大きい場合、長期的に見ると支払いが多くなるため相続放棄をした方がいいケースもあります。

たとえば、農地や森林などは固定資産税がかかり、管理・整備費用もかかるため、長期的に見ると維持コストが高くなります。もちろん相続した資産を売却することもできますが、資産によってはすぐに買い手が見つかるとは限りません。

相続を受ける際には負債だけでなく、資産に維持コストがかかるかどうかも確認しておきましょう。

相続紛争を回避したい場合

相続放棄は、相続人同士の紛争を回避したい場合に選ばれるケースもあります。

相続が発生した場合に、複数の相続人がいると遺産分割協議を行って、相続財産の分け方を決めなければなりません。遺産分割協議は全員が合意しないと成立しないため、1人でも反対する人がいると遺産を分けることができなくなります。

遺産分割協議がこじれてしまうと、家庭裁判所で遺産分割調停や審判となり、相続開始してから数年以上かけてトラブルが続くケースもあります。

相続放棄をすると相続人ではなくなるため、遺産分割協議や調停への参加も不要です。また、相続放棄をすると代襲相続も発生しないため、子どもや孫に負担をかける心配もありません。

特定の相続人に相続財産を引き継がせる場合

特定の相続人に相続財産を引き継がせるような場合は、他の人が相続放棄をする方法が有効です。

たとえば、被相続人が行っていた事業を引き継ぐ相続人がいた場合に、その相続人に事業に必要な財産や不動産を引き継がせるような場合に有効となります。

遺産分割協議で特定の相続人にすべての財産を相続させることも可能ですが、負債の負担割合は債権者の合意がないと変更できません。

そのため、相続人による協議で負債の負担者を決めても、金融機関の合意がなければ他の相続人にも相続に応じた負担が生じます。

相続放棄であれば被相続人の負債を引き継ぐことなく、特定の相続人に資産と負債を集中させることができます。

相続したくない土地や建物がある場合

資産より負債の方が少なくても、相続したくない土地や建物がある場合は、相続放棄を選択するケースもあります。

たとえば、相続しても利用価値のない不動産が財産の多くを占めているような場合です。

不動産を保有するためには、固定資産税や修繕コストなどのランニングコストが発生するため、売却できない価値の少ない不動産を保有すると金銭的な負担が大きくなります。

また、老朽化した空き家の場合は、事故による損害賠償のリスクもあるため、トラブルを未然に防ぐために相続放棄を行う場合もあります。

まとめ

相続放棄には、すべての財産の相続ができなくなることや後から撤回できないデメリットがあります。

全員が放棄をすると、先祖から受け継いだ資産が失われるため慎重に検討することが大切です。相続放棄は後順位の相続人に負担をかけてしまう可能性もあるため、事前に伝えておく必要もあります。

また、相続放棄は、被相続人が亡くなったことを知った日から3か月以内に申述書を家庭裁判所に提出しなければなりません。

期限を過ぎてしまうと手続きできなくなるため、早めに手続きを進めていきましょう。

相続放棄は一切の財産を引き継がないという行為であり、安易に判断すると後悔する可能性もあります。

そうならないためにも、相続放棄を検討している場合は相続に強い弁護士に相談することがおすすめです。

相続放棄でお悩みの方は、まずは相続放棄の管轄である被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に相談することをお勧めします。

相続放棄の手続を親切に教えていただけると思います。

最終更新日 2025年3月22日

弁護士紹介(監修者)
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学経済学部卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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