相続人が分割前に死亡!数次相続の場合、手続きはどうなるの?【事例あり】

【事例有】数次相続とは 相続開始後に相続人が死亡し次の相続が始まる事

数次相続とは、ある人の相続が開始した後にその遺産について分割をしないうちにさらに相続人が死亡し、その相続人についても相続が開始することをいいます。

ここでは、数次相続について、具体例を挙げて説明します。

事例

被相続人Aに妻Bと子CDがいたとします。

平成30年1月10日にAが死亡しましたが、Aの遺産についてBCDは特に話し合い(遺産分割協議)をしないままにしていたところ令和元年5月15日にDが死亡しました。

Dには妻Eと子FGがいます。この場合に何が問題となるかが数次相続を理解するポイントとなります。

Dの遺産についてはEFGが相続します。

ところが問題は、Aの遺産がまだ分割されていませんから、Dの死亡時点ではDの遺産にはAから承継した法定相続分も含まれるということです。

具体例に数字で示してみましょう。

Aの遺産が3000万円あったとします。

BCDの法定相続分割合で考えると、Bが1500万円・Cが750万円・Dが750万円でそれぞれ権利を有しています。

その状態で具体的な遺産分割方法を話し合わないままDが死亡していますから、EFGは750万円のAの遺産についても相続人となります。

これが数次相続です。

数次相続にはどのような問題が出てくるかを以下にケース別にみてみましょう。

①遺産分割協議がやりにくい

【事例有】数次相続とは 相続開始後に相続人が死亡し次の相続が始まる事2Aの遺産について今から遺産分割協議をする場合、その遺産分割協議に参加しなければいけない相続人はBCEFGの5人になります。

BとEは嫁姑の関係になり、CとEは弟の奥さん、CとEFは叔父と甥姪、BとFGは祖母と孫という関係になります。

Dの生前に遺産分割協議をしておけば単に親子と兄弟の関係でしたが数次相続が発生した時点でこのような関係に変わります。

それぞれの親族関係にもよりますが、一般的には気を遣う関係になってしまうことが多いかもしれません。

実際にはさらにCが死亡して数次相続が起こったり、FやGにも相続が発生すると次の数次相続が発生しますから収拾がつかなくなります。

②不動産の相続登記の問題

【事例有】数次相続とは 相続開始後に相続人が死亡し次の相続が始まる事3上記①の場合はAの遺産に不動産がない例で説明しました。

遺産が預貯金だけであれば、亡くなると銀行口座が凍結されるので被相続人のお金が下ろせなくなることから、早めに遺産分割協議をする場合も多いでしょう。

問題は不動産がある場合の名義変更です。

相続登記は今のところは義務付けられておらず(2024年4月1日より義務化します)、これまではたくさんの不動産が亡くなった人の名義のままで放置されてきました。

具体例を挙げて説明します。

上記①の相続関係で、Aの名義の土地と建物があったとします。

Aが亡くなった時にBCDで話し合い、Bの名義にしておけば簡単にできましたが、Dがさらに亡くなっていますから、B名義にしたい場合は、BCEFGの5人で話し合って遺産分割協議書を作成した上で各相続人の印鑑証明書を添付して登記申請をしなければなりません。

この登記申請は、技術的には一回の申請でBの名義にすることができますが問題はそこではなく、親子関係や兄弟姉妹関係に比べて、BとEFGの関係では実印と印鑑証明を要求した上、さらに無償で不動産名義を譲ってほしい、ということをお願いするのは親族間の人間関係が良好でないと難しいといえます。

実際にこの数次相続のパターンで話し合いがうまくできなかったり、億劫になったりで放置され続けた不動産が日本全国には多数あります。

何世代も放置された不動産はもはや誰が相続人かもすぐにはわからず収拾がつかなくなっています。

政府の試算によるとその経済的損失額は約6兆円にもなるそうで、この背景こそが相続登記の義務化に繋がりました。

ここで少し触れました一回の申請で登記をする方法についても参考までに解説しておきます。

(1)B名義にする方法

Bは数次の相続人ではなくAの直接の相続人ですからさほど難しくはありません。

この場合は遺産分割協議書の中に「DがAより後に亡くなっていること」「Dの法律上の地位を受け継いでいるEFGがDに変わってAの遺産分割に参加していること」を明記して、Bが不動産を取得したという内容にします。

(2)F名義にする方法

FはAの直接の相続人ではなく、父Dが相続したものをさらに相続した地位にあります。

このような場合にも一回の申請でF名義にはできます。遺産分割協議書に(1)と同じくDの地位を受け継いで参加している旨を記載します。

そして、遺産分割協議の内容は「Dが不動産を単独で取得し」「Dが単独で取得したものをFが単独で取得する」という2つのポイントが必要となります。

不動産登記申請では中間の法律関係を省略できないという決まりがありますか、数次相続の場合には特例で中間が単独で相続した場合には一回の申請で登記をすることができます。

2回に分けてもよいのですが、A→B→Fの場合には申請の際に必要となる登録免許税(収入印紙代)が余分にかかります。

死者名義の土地の登記をする場合には特則により非課税になりますが、建物については通常通り納める必要があります。

まとめ

今回は数次相続について確認しました。

数次相続が会社しますと、話し合いが長引く場合がありますから放置せずに早めに遺産分割協議をするようにしましょう。

難航した場合でも弁護士に相談しながら進めるのがよいでしょう。

また相続登記が義務化され、改正法施行後は過去に発生した相続についても適用されるため放置したままの不動産がある場合は早めに登記するようにしましょう。

最終更新日 2024年7月6日

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学経済学部卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

最終更新日 2024年7月6日

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