相続人代表者指定届って何のための届け出?提出する理由と書き方
不動産を持っている人が死亡すると、市町村は、不動産を相続する可能性が高そうな相続人に対し、「相続人代表者指定届」を郵送します。
「相続人代表者指定届」とはどういうものであり、これを提出しないとまずいのだろうかとお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、相続人代表者指定届とは何のための届け出であり、提出する理由と書き方について解説します。
「相続人代表者指定届」とは
市町村は、その年の1月1日時点の不動産の所有者に対し、毎年4月ないし5月ころに「固定資産税・都市計画税納税通知書」を郵送し、これらの納税を求めます。
しかし、不動産の所有者が死亡すると、死者には「固定資産税・都市計画税納税通知書」を郵送することができません。
そこで、市町村は、「固定資産税・都市計画税納税通知書」を誰に郵送したらよいのかを連絡してもらうため、相続人に対して「相続人代表者指定届」を郵送します。
すなわち、「相続人代表者指定届」とは、納税及び還付に関する書類を受領する代表者を市町村に届け出る書類ということになります。
市町村は、「相続人代表者指定届」を返送してもらえないと、「固定資産税・都市計画税納税通知書」を郵送することができず、円滑な行政事務が阻害されます。
そこで、実際の運用としては、不動産を相続する可能性が高そうな相続人にまず郵送し、その相続人が返送してくれなかったら別の相続人に郵送するというようにしているようです。
「相続人代表者指定届」を無視するとどうなるか?
相続人代表者指定届」は、市町村が「固定資産税・都市計画税納税通知書」を郵送する際の宛名の指定を求めるものです。
そのため、相続人が「相続人代表者指定届」を無視して返送しなかったとしても、そのこと自体では何らのペナルティはありません。
市町村が非常に困り、別の相続人に「相続人代表者指定届」を郵送する手間をかけさせることになるだけです(相続人が誰も返送せず、相当期間が経過したときは、市町村は、地方税法9条の2第2項に基づき、相続人の中から相続人代表者を指定することができます)。
しかし、相続人は、相続放棄をしない限り、被相続人の全ての相続財産を相続することになります。
相続する相続財産には相続債務も含まれますので、被相続人が死亡するまでの固定資産税と都市計画税の支払義務もまた相続人が相続することになります(地方税法343条2項)。
したがって、「相続人代表者指定届」を返送するしないにかかわらず、相続人は、相続放棄をしない限り、固定資産税と都市計画税を納付しなければなりません。
そのため、相続放棄をしないのであれば、「相続人代表者指定届」に必要事項を記載して返送したほうがよいでしょう。
また、相続放棄をしたのであれば、受理証明書(相続放棄は家庭裁判所への申述によって行いますので、相続放棄をすると家庭裁判所が受理証明書を発行してくれます)のコピーを不動産がある市町村に提出しておけば、以後、その市町村から相続財産に関する納税及び還付に関する書類が届くことはなくなります。
「相続人代表者指定届」の書き方
「相続人代表者指定届」の書式は、全国で画一的に決められているものではなく、市町村によって異なります。
同封されている説明文を見ながら記入すればよいのですが、相続人代表者(「固定資産税・都市計画税納税通知書」の宛先になります)の署名だけでなく、相続人全員の署名を求める市町村もあり、その場合は署名集めの手間がかかります。
なお、「相続人代表者指定届」を提出した後、届いた「固定資産税・都市計画税納税通知書」に応じて支払ってしまうと、単純承認したものとみなされ相続放棄をすることができなくなりますので注意が必要です。
また、ここまで説明の便宜上から固定資産税や都市計画税に限定してご説明してきましたが、「相続人代表者指定届」は、市民税、県民税、軽自動車税、固定資産税、都市計画税の納税及び還付に関する書類を受領する代表者をまとめて届け出るような体裁になっているのが通常です。
まとめ
このように、「相続人代表者指定届」が届いたときの対象方法には上記のような注意点があります。
「相続人代表者指定届」についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。
最終更新日 2024年7月6日
最終更新日 2024年7月6日