遺産相続でもめると、手続や時間はどれくらいかかるか?遺産分割・遺留分・遺産確認・遺言無効ごとに解説
遺産相続でもめると、どのような手続きが必要になるのか?
時間はどれくらいかかるのか?
ここでは、相続の4大紛争である、遺産分割・遺留分・遺産確認・遺言無効について、それぞれの手続の流れや時間を解説します。
遺産分割の場合:協議→調停審判で、半年~1年前後
ある人が遺言も生前贈与もなく亡くなった場合、相続人の間で遺産を分割することになります。
これを遺産分割といい、たいていの相続のケースがこれに当たります。
遺産分割は、まずは相続人全員の話し合いで行うのが原則です。これを「遺産分割協議」といいます。
しかし、遺産分割協議をするためには、全ての法定相続人が参加した上で、全ての法定相続人が合意しなければなりません。
1人でも反対する法定相続人がいれば遺産分割協議は成立しませんので、その場合は家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行うことになります。
遺産分割調停とは、裁判所を間に入れた話し合いのことです。
全ての法定相続人が合意しなければ調停は成立しませんが、裁判官や調停委員という第三者が間に入ることで、身内同士の話し合いではまとまらなかった話であってもしばしばまとまることがあります。
遺産分割調停が成立しなかったときは、遺産分割審判に移行します。
遺産分割審判では、最終的に裁判官が審判書を作成し、どの相続人がどの相続財産を取得するかを強制的に命令することになります。
これらの時間がどの程度かかるかは事案によりますが、裁判所は遺産分割事件の長期化を嫌っており、申立受理後1年以内に終局的解決を迎えることが望ましいとしています。
結局、協議→調停審判で、半年~1年前後かかります。
遺留分の場合:協議→調停→訴訟で、半年~1年前後
故人の遺言や生前贈与によって自身の最低限の相続分(遺留分)を侵害された場合、遺留分侵害額に相当する金銭を請求できます。
これを、遺留分侵害額請求といいます。
遺留分を請求するときは、最初に配達証明つきの内容証明郵便で遺留分侵害額請求書を送付するのが通常です(遺留分が侵害されていることを知った日から1年が経過すると請求権を行使することができなってしまいます。そのため、請求権を行使した日が知った日から1年を経過していないことを明確にするために必ず配達証明付きの内容証明郵便で請求しなければなりません)。
相手方との話し合いがつかなければ、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停を申し立てるか、地方裁判所(請求額が140万円以下のときは簡易裁判所)に遺留分侵害額請求訴訟を提起するかのどちらかを行うことになります。
これらの時間がどの程度かかるかは事案によりますが、民事裁判では1審判決が出るまで1年程度の時間はみておくべきです。
結局、協議→調停→訴訟で、半年~1年前後かかります。
遺産確認の場合:訴訟で半年~1年前後
遺産分割の前提として、ある財産が遺産に含まれるかどうかについて争いがある場合、遺産確認が必要となります。
この争いは本来的には訴訟で解決されるべき事項であるため、ある財産について遺産に含まれると主張する相続人が原告となり、他の全ての相続人を被告として遺産確認訴訟を提起し、その判決確定後に遺産分割調停の申立てをすることになります。
この点について、最高裁判所昭和41年3月2日決定は、遺産の帰属性(ある財産が遺産に含まれるかどうか)を家庭裁判所が判断した上で遺産分割の審判をすることができるとの判断を示しました。
しかし、遺産分割審判で遺産の帰属性について判断可能であるとしても、家庭裁判所が判断することが適切かどうかは全くの別問題です。
なぜなら、遺産分割審判で示された判断を不服とする相続人は、遺産確認訴訟(遺産分割審判で遺産であることが否定されたとき)や所有権確認訴訟(遺産分割審判で特定の相続人名義の財産が遺産であることが認められたとき)を提起し、遺産分割審判の判断内容を覆すことができるからです(審判には既判力がないため、後の裁判所を拘束することができません)。
この点について、上記の最高裁判所決定も、遺産分割審判の後に提起された訴訟で審判とは異なる判断がなされ、その判決が確定した場合には、遺産分割審判は判決の判断と抵触する限度で効力を失うとの判断を示しています。
とはいえ、審判が効力を失った後、審判によって取得したはずの遺産を取得できなくなってしまった相続人の利益をどのように保護するかについて定立された基準がないことから、審判を先行させると法律関係が複雑かつ不安定になってしまいます(民法911条の共同相続人間の担保責任の規定によって解決を目指すことになるものの、担保責任の内容について遺産分割の解除を認めるべきかどうかについて争いがあります)。
そのため、家庭裁判所の実務では、相続人全員が不起訴の合意(民事訴訟を提起しないという合意)をしてその旨を調書に記載するか、あるいは遺産の帰属性を争うとの主張が遺産分割を引き延ばす目的に出たものであって後になって訴訟が提起されたとしてもその主張が認められる蓋然性は低いと考えられる場合でない限り、遺産分割調停のできるだけ早い段階で訴訟の提起を促し、遺産分割調停は訴訟の提起を待って取下げを勧告する(訴訟の判決が確定した後、必要であれば、その時点で新しく遺産分割の調停を申し立てる)という運用がなされています。
結局、訴訟で半年~1年前後かかります。
遺言無効の場合:訴訟で半年~1年前後
遺言の効力に疑問がある場合には、遺言無効の確認が必要となります。
遺言の効力に争いがある事件の典型例としては、遺言書が被相続人の死期が迫った段階で作成され、遺言能力に疑義が生じるようなケースです。
また、複数の遺言書があるケースでは、作成時期の先後、撤回の有無や範囲、撤回されていない部分の整合性などが問題となります。
遺言無効が争われた場合の対処方法は、遺産確認が争われた場合の対処方法と同じです。
具体的には、相続人全員の不起訴の合意がない限り進行中の遺産分割調停は取り下げることになり、遺言無効確認訴訟で遺言の有効無効についての判断が確定した後、遺産分割調停を再度申し立てることになります。
これらの時間がどの程度かかるかは事案によりますが、民事裁判では1審判決が出るまで1年程度の時間はみておくべきです。
結局、訴訟で半年~1年前後かかります。
まとめ
遺産分割・遺留分・遺産確認・遺言無効の手続の流れと時間は上述したとおりです。
調停であれば自分ですることもできますが(もちろん調停の段階から弁護士に依頼したほうがよい解決になることが期待できます)、裁判になると通常は弁護士に依頼する必要があります。
相続問題についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。
最終更新日 2024年7月6日
最終更新日 2024年7月6日