遺産の一部分割はできるか?どのような場合にできないのか?
「遺産の一部だけ分割することはできるの?」
「できないのはどんな場合?」
ここでは、そうした疑問にお答えします。
遺産分割とは
遺産相続においては、相続人全員で話し合いをして合意ができた場合には、法定相続分割合に従うことなく自由な割合で分割することも可能です。
この話し合いのことを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議は任意に集まって行うこともできますし、話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停の手続きを申し立てることもできます。
調停とは、家庭裁判所で調停委員という人を間に挟んでの話し合いで、直接相続人同士が顔を合わせることなくそれぞれの意見を聞いて調整してくれる手続きです。
遺産分割は1回で終わらせる必要があるか
では、遺産分割は1階で全部終わらせる必要があるのでしょうか?
遺産分割協議は、相続人全員の合意があればどのように分割することもできます。
ここで遺産分割について規定された民法の条文を見てみましょう。
民法907条1項には、「産の全部又は一部の分割」とあり、一部のみを分割することもできることが明記されています。
このことから、遺産分割は原則として「いつでもでき」「全部でも一部でも可能」であることがわかります。
また、回数についても制限はなく、一度一部の財産を分割し、後で残りの財産を分割することもできることになります。
一部の遺産分割
ここでわかりやすい例を挙げて説明してみます。
(相続関係)
被相続人 A
相続人 B(妻)
C(長男)
D(長女)
(相続財産)
預貯金 O銀行2500万円
P銀行1000万円
不動産 自宅の土地・建物
株式 K社2000株
このようなケースにおいて、何もしない場合にはAの死亡時にB4分の2(2分の1)、C4分の1、D4分の1の割合で全体の遺産を分けることになります。
遺産分割協議をしてそれぞれの遺産を例えば
Bが預貯金
Cが不動産(土地・建物)
Dが株式
などのように分割してもよいです。
ところが、Bが預貯金を相続することは決まっているけれどもそのほかの財産についてはまだ検討中である場合には、とりあえず預貯金のみについてBが取得する旨の遺産分割協議書を作成して銀行の手続きを先に行うこともできます。
その後に、不動産と株式についても遺産分割協議書を別途作成すればそれぞれ法務局、証券会社での手続きが可能になります。
また、上記の例で預貯金と不動産について遺産分割した際にはそれが遺産のすべてだと思っていたところ、後から被相続人がK社の株式を所有していたことが判明した場合には、株式のみの遺産分割を後から行ってもかまいません。
一部分割の有効活用
民法では第907条において、一部分割をすることを認めています。
一部分割は、相続人全員の話し合いが比較的人すぐできる場合などは、預貯金の手続きを急ぐような事情があるケースで利用できます。
ただ、相続人同士が仲違いをしているようなケースでは、一部分割をするよりもすべての財産を明らかにして、後日の紛争を防止する観点からもあまり相応しくはないかもしれません。
そのようなケースで一部分割を行う場合であれば、必ずすべての財産を全員が把握した上で一部分割であることを認識して行うべきでしょう。
まとめ
今回は、遺産分割における一部分割の可否について説明してきました。
遺産分割は、相続人全員の合意があればかなり柔軟に行うことができます。
ただし、一方で争いの元にもなりますから、分割方法で悩まれたら一度弁護士に相談されるとよいでしょう。
最終更新日 2024年7月6日
最終更新日 2024年7月6日