私の寄与分は認められる?寄与分が認められるために重要な4つの条件
「親の介護をしたのは私だけなのに、何もしなかった他のきょうだいと同じ割合で相続するのでは納得できない」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは寄与分が認められるために重要な4つの条件について解説します。
寄与分とは
被相続人の財産の維持や増加について「特別の寄与」(これを「寄与分」といいます)をした相続人がいるときは、被相続人の遺産から寄与分を取り除いて遺産分割をすることになります(遺産から取り除いた寄与分は、特別の寄与をした相続人が取得します)。
民法904条の2は、被相続人の財産を維持・増加させた「特別の寄与」について、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法」を列挙しています。
例えば、被相続人だけであれば6億円の遺産しかのこせなかったところ、相続人Aが被相続人の事業に無償で協力したことで被相続人の遺産が8億円に増えたというケースで考えてみます(被相続人の相続人は、ABCの3人の子のみ)。
このとき、相続人Aの寄与分は2億円となり、遺産分割の対象となる遺産は6億円となりますので、相続人BとCは2億円ずつ、相続人Aは2億円+寄与分2億円=4億円を相続することになります。
寄与分が認められるためには
寄与分が認められるためには、次の4つの条件が重要です。
すなわち、①相続人による寄与行為が存在すること、②寄与行為が「特別の寄与」と言えること、③被相続人の財産が維持・増加したこと、④寄与行為と被相続人の財産の維持・増加との間に因果関係があること(相続人の寄与行為によって被相続人の財産が維持・増加したと言えること)です。
まず、相続人が相当な対価を得ているときは契約行為であり、寄与行為とは言えません。
寄与行為と言うためには、実質的に無償でなされなければなりませんので、無償であっても相当の謝礼をもらっているときは寄与行為とは言えませんし、有償であっても対価が少ないときは寄与行為と言える場合があります。
また、寄与分が認められるためには、単なる寄与行為では足りず、「特別」の寄与行為と言えなければなりません。
この点、被相続人との身分関係に基づき通常期待される程度の貢献では、「特別」の寄与とは言えません。
すなわち、親族間では扶養義務(夫婦間では民法752条の協力扶助義務や民法760条の婚姻費用の分担義務、直系血族や兄弟姉妹では民法877条1項の扶養義務)があるため、これらの義務の範囲内の行為では「特別」の寄与とは認められません。
例えば、妻の家事労働(いわゆる「内助の功」)は夫婦間の協力扶助義務(民法752条)の範囲内の行為であると考えられていますので、家事労働をしただけでは寄与分は認められません。
前述したとおり、民法904条の2は「特別の寄与」として、①事業に関する労務の提供、②事業に関する財産の給付、③被相続人の療養看護、④その他の方法を列挙しています。
①事業に関する労務の提供とは、被相続人の事業に労働力を提供することです。
ただし、労働力を提供した相続人が被相続人から給与等の対価を受け取っているときは、雇用契約等に基づく行為であって寄与行為とは言えません。
②事業に関する財産の給付とは、相続人が被相続人に対し、金銭その他の財産を贈与したり、無利息で金銭を貸し付けたり、タダで不動産を貸し渡したり(これを「使用貸借契約」と言います)したときです。
なお、夫婦が共働きをしたお金で不動産を購入したものの、共有名義にせず夫の単独名義にした場合は、裁判所の裁量判断に委ねられる寄与分を主張するのではなく、「夫婦の共有物であって、夫婦の収入の比率によって定まる夫の持分のみが相続の対象になる」と主張することを検討すべきです。
③被相続人の療養看護とは、病気療養中の被相続人を看護することです。
ただし、寄与分が認められるためには、看護によって相続財産が維持・増加したことが必要ですから、相続人が看護したことによって介護施設費用や訪問介護費用を節約することができたと言える場合でなければなりません。
④その他の方法としては、相続人の1人が被相続人の生活費を負担していたケース(被相続人は生活費の負担を免れ、それによって相続財産が維持・増加したと言える)、被相続人が所有するアパートを取り壊して土地を売却するにあたり、相続人の1人が賃借人との立退交渉、アパートの取り壊しや滅失登記手続、土地の売買契約の締結等をまとめたケース(被相続人は更地を手に入れ、それによって相続財産が増加したと言える)、夫が死亡したので、将来の扶養を期待して一人息子に遺産を相続させようと考えて妻が相続放棄をしたが、一人息子が妻よりも先に死亡したケース(被相続人=一人息子は妻の相続放棄によって妻の相続分を手に入れ、それによって相続財産が増加したと言える)が考えられます。
まとめ
このように、寄与分が認められるためには上記のような条件をクリアする必要があります。
寄与分についてお困りのときは、当事務所までお気軽にご相談ください。
最終更新日 2024年6月30日
最終更新日 2024年6月30日