相続税の基礎控除とは?計算方法や課税財産を紹介

相続税の基礎控除、課税資産

最終更新日 2025年4月22日

ご家族の誰かがお亡くなりになった場合、そのご遺族は相続手続を行うことになります。

相続には相続額に応じて「相続税」という税金がかかり、相続人は期限までに計算を行って納めなければなりません。

ただし、相続税には基礎控除やそれ以外にもさまざまな控除があり、これらの控除額が遺産総額を上回れば相続税はかかりません。

そのため、相続税の計算を行ううえで、どのような控除があるのかを正しく知っておくことが大切です。

この記事では、相続税の基礎控除の概要や計算方法、課税財産の種類などを紹介します。

相続税の基礎控除とは

相続税の基礎控除遺産相続には相続税という税金が発生します。

ここでは、相続税の基礎控除の概要や計算方法などを解説します。

相続財産から控除できる金額のこと

相続税の基礎控除とは、相続税の計算を行う際に、相続財産の総額から差し引くことができる金額のことです。

相続税の基礎控除は相続人であれば無条件で適用され、相続税の負担を大幅に減らせる制度です。

遺産は、残された家族にとってこれからの生活資金にもなりえるもので、高額な相続税が発生すると遺族の生活が苦しくなります。

そのため、相続税の負担を軽減して個人生活の経済基盤を強化することを目的に、相続税の基礎控除が設けられています。

相続税の基礎控除の計算方法

相続税の基礎控除は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で計算します。

  • 法定相続人が1人:3,600万円
  • 法定相続人が2人:4,200万円
  • 法定相続人が3人:4,800万円

このように、法定相続人が多くなるほど基礎控除額も大きくなる仕組みです。

法定相続人が1人の場合は3,600万円の基礎控除が適用されるため、相続財産の総額が3,600万円以下の場合は相続税が発生しません。

ちなみに法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続する権利を有する人を指します。

相続税の基礎控除の改正について

相続税の基礎控除は過去に何度か税制改正が行われており、最近では平成27年1月1日に改正されています。

ちなみに税制改正が行われる前の基礎控除は、5,000万円+(1,000万円×法定相続人)で計算が行われていました。

法定相続人が1人の場合、税制改正前は6,000万円の基礎控除だったのに対し、税制改正後は3,600万円の基礎控除に減っています。

基礎控除は相続税がかかるかどうかのラインとなるため、この税制改正によって、課税対象者や相続税の納税額が増加しました。

相続税の基礎控除以外の控除

相続税の基礎控除以外の控除相続税から控除できるのは基礎控除以外にもあります。

ここでは、相続税の基礎控除以外の控除について解説します。

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、亡くなった方の配偶者を対象とした控除のことです。

1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額まで非課税になります。

つまり、配偶者の税額軽減が適用されると、配偶者が相続した遺産総額が1億6,000万円を超えなければ、相続税は発生しないというわけです。

配偶者の税額軽減を受けるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

  • 法律上の配偶者であること
  • 相続税の申告書を提出すること
  • 遺産分割が確定していること

配偶者の税額軽減を受けるためには法律上の配偶者である必要があり、事実婚や内縁関係では対象外です。

未成年控除

未成年控除とは、亡くなった方の相続財産を未成年者が取得した場合に、相続税の税額から一定の金額を差し引く制度です。

計算式は、「(18歳-相続した時の年齢)×10万円」で、未成年の相続人が18歳に達するまでの年数によって変わります。

たとえば、10歳の時に相続した場合は、「(18歳-10歳)×10万円」となり、未成年者控除として控除される金額は80万円です。

未成年控除を受けるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

  • 財産を取得する未成年者が法定相続人であること
  • 財産を取得したときの住所が日本国内であること
  • 財産を取得したときに18歳未満であること

なお、未成年の相続人の相続税額から未成年者控除額を控除しきれない場合、相続人の父母や祖父母などの扶養義務者の相続税額から控除することも可能です。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、相続した宅地の相続税評価額を最大で80%減額できる制度です。

相続税評価額とは、相続税を算出する際に基となる評価額のことです。

たとえば、相続税評価額が5,000万円の土地を相続した場合、この特例を使うことによって1,000万円まで引き下げることができます。

小規模宅地等の特例を受けるためには、相続税の申告書を提出しなければなりません。

相続する宅地の相続税評価額が基礎控除を超えない場合は、そもそも相続税が発生しないため、特例を受ける必要はありません。

障害者控除

障害者控除とは、85歳未満の障害者が財産を相続した場合に適用される特例措置の税額控除です。

控除額の計算式は、一般障害者と特別障害者とで異なります。

  • 一般障害者:(85歳-相続開始日の障害者の年齢)×10万円
  • 特別障害者:(85歳-相続開始日の障害者の年齢)×20万円

一般障害者に比べると特別障害者の方が控除額は大きくなります。

たとえば、35歳0ヵ月の一般障害者の障害者控除は、「(85歳-35歳)×10」となり、500万円が障害者控除として控除される金額です。

障害者控除を受けるためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

  • 財産を取得する障害者が法定相続人であること
  • 財産を取得したときの住所が日本国内であること

障害者控除は相続人が障害者だった場合に受けられる控除であり、亡くなった方が障害者だった場合には適用外となります。

相続税の対象となる財産

相続税の対象となる財産相続税を正しく計算するためにも、相続税の対象となる財産について知っておきましょう。

ここでは、相続税の対象となる財産を紹介します。

相続財産

相続税の対象となるものは、被相続人が亡くなった時点で所有していたすべての財産です。

具体的には、現金、不動産、預金、有価証券をはじめ、自動車、貸付金、ゴルフ会員権、貴金属なども対象となります。

また、財産が相続税の対象になるかどうかについては、名義が誰かではなく、誰が実質的に管理していたかどうかによって判断されます。

たとえば、故人が子どもの名義で持っていた預金について、故人が管理していたものであれば、相続税の相続財産とみなされるというわけです。

みなし相続財産

相続税の対象となるものとして、みなし相続財産が挙げられます。

みなし相続財産とは、相続または遺贈によって受け取る財産ではなく、亡くなった方の死亡をきっかけに受け取る財産です。

具体的には、本人の死亡によって遺族に支払われる生命保険金や、勤務先から支払われる死亡退職金などが挙げられます。

また、年金や保険金などを受け取る定期金の権利、生命保険契約に関する権利、債務を免除された債務免除などもみなし財産です。

ちなみに、みなし相続財産は厳密にいうと相続財産ではないため、相続放棄をしても受け取れることや、遺産分割の対象外になっているなどの特徴があります。

生前に贈与された財産

故人が生前に贈与した以下の財産について、死亡までの3年以内に贈与されたものは相続税の対象となります。

相続税を減らすために直前に生前贈与することを防ぐことを目的に、死亡するまでの3年以内に故人から贈与された財産は相続税の対象です。

贈与の際に贈与税が課税されたかどうかに関係なく、贈与税の基礎控除110万円以下の財産でも相続税の課税対象に含まれます。

ただし、贈与税を含めている場合は、その税額は相続税から控除されます。

なお、相続や遺贈で遺産を受け取る人以外へ贈与された財産や、贈与税の特例を適用して贈与された財産は相続税の対象になりません。

相続時精算課税が適用された贈与財産

贈与者が死亡したときに、贈与財産を相続税の対象に加える相続時精算課税制度を利用し、生前贈与された財産も相続税の対象になります。

相続時精算課税制度は、納税者の選択によって贈与税や相続税を通じた課税が行える制度です。

この制度を利用することによって、贈与を受けた場合に特別控除額2,500万円までは贈与税がかからず、それ以上の場合は超えた金額に基づいて贈与税が発生します。

2,500万円までの贈与は「贈与税がかからない」だけであり、相続時に全て相続財産として課税対象に加算されることを理解しておきましょう。

相続税の課税対象から差し引かれる財産

相続税の課税対象から差し引かれる財産相続財産の中には非課税財産があり、課税価格には含まれないため、課税価格自体を減らせる場合があります。

ここでは、相続税の課税対象から差し引かれる財産を紹介します。

非課税財産

非課税財産とは、被相続人が亡くなった時に所有している財産や、死亡を原因として発生した財産のうち相続税の計算に含めなくてよい財産です。

非課税財産として、具体的に以下が挙げられます。

  • 公益団体などに寄付した相続財産
  • 非課税枠の範囲内の死亡保険金・退職金
  • 公益事業用財産
  • 心身障害者扶養共済制度で支払われる年金
  • 墓地、仏壇、祭具など

これらの非課税財産には相続税が課税されません

そのため、非課税財産の中で亡くなった後に買う予定のものがあれば、生前に買っておくと節税対策にもなります。

債務

相続税には、亡くなった方が残した借入金や未払金などの債務を控除できる債務控除という制度があります。

具体的には、銀行やその他個人からの借入金、病院への未払医療費、亡くなった後に支払う公租公課、賃貸不動産の借主から預かっている敷金などです。

債務控除を適用して相続財産が基礎控除額以下になる場合、相続税の申告は不要となります。

注意点としては、団体信用生命保険で補填されている住宅ローンや、保証債務などは債務控除の対象にならないことです。

また、墓地や仏壇などの非課税財産の未払金についても債務控除の対象外となります。

お葬式費用

お葬式費用は、相続税の計算を行う際に控除することができます。

お葬式費用は、故人を弔う一連の儀式や埋葬を行うにあたって、葬儀会社やお寺、神社などに支払う費用です。

会葬御礼やお葬式を手伝ってくれた方への心づけ、飲食代なども含まれます。

たとえば、相続する遺産が4,000万円あって葬式費用が200万円かかった場合、課税対象となるのは3,800万円です。

一方、香典返しや墓地の借入料、法要にかかる費用などは対象外となるため、どこまで控除できるかを事前に確認しておく必要があります。

相続税の計算とシミュレーション

相続税の税額を計算する際は、各相続人が課税遺産総額の法定相続分を受け取るとして、まずは次の計算式で仮の相続額を算出します。

計算方法は、「課税遺産総額×法定相続人×税率-控除額=各相続人の仮の相続税額」です。

次に各相続人が実際に負担する相続税額を、相続税の総額を各人が実際に遺産を取得する割合で按分することによって算出します。

計算方法は、「相続税の総額×(各相続人の課税価格)+課税価格の合計額」です。

相続税の計算方法は非常に複雑であり、課税遺産総額の計算は簡単ではありません。

間違った申告によって脱税になるリスクもあるため慎重に行う必要があります。

申告を正しく行うためにも、専門家に依頼して相続税の計算やシミュレーションを行うことをおすすめします。

まとめ

相続税の基礎控除とは、相続財産の総額から一定額控除できる金額であり、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で求めることができます。

相続税の基礎控除を正しく適用することで相続税額を減らし、節税につなげることも可能です。

一方、実際に相続税を計算するには複雑な手順や専門知識が必要となるため、相続税を正しく申告するためにも専門家の力を借りることをおすすめします。

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最終更新日 2025年4月22日

弁護士紹介(監修者)
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学経済学部卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

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