借地権の相続における注意点

借地権を相続した時に覚えておくと便利な7つのコト

建物を所有するために他人の土地を利用する権利を設定している場合もあります。

これを「借地権」といいます。借地権には「賃借権」「地上権」の2種類があります。

この2つの違いはいくつかありますが、賃借権は第三者に権利を譲渡するのに地主(土地の所有者)の承諾を得なければなりませんが、地上権は地主の承諾を得ることなく第三者に権利を譲渡できます。

では、借地権を相続するとどのようなことが起きるのでしょうか。

土地上の建物は被相続人の所有物ですから、相続人が所有権を取得します。

取得の方法は、法定相続分・遺言・遺産分割協議で誰が建物を承継するかが決まります。

ただ、借地権で建物を所有している場合には、建物の承継者だけでなくその建物を利用する借地権の承継者をも決定しなければなりません。

借地権の相続に地主の承諾は必要か?

借地権を相続した時に覚えておくと便利な7つのコト2先ほど述べたとおり、賃借権の場合には第三者に権利を譲渡する場合には地主の承諾が必要なのですが「相続は第三者への譲渡にはあたらない」ため地主の承諾なしに相続人に土地の利用権は承継されます。

借地権名義の変更料や承諾料を請求された場合

地主は上記のような法律の規定を理解していない場合もあり、相続人が利用するならば承諾料や名義変更料の支払いを求められることがあるかもしれません。

結論からいいますと、支払う義務はありません。

しかし、その建物に引き続き居住するような場合には揉めたくはありませんから、金額によっては謝礼の気持ちで渡すことも検討の余地があるかもしれません。

立ち退きを要求される

法律上、地上権の相続には地主の承諾を要しませんから仮に「〇〇さんと契約したのであって、相続人の方とは契約していないから退去してほしい」などと言われても、退去する義務はありません。

しかし、あまり感情的に争っても良いことはありませんから、早めに弁護士に間に入ってもらうなどして解決するのが賢明かもしれません。

地代の値上げを要求される

被相続人の死亡をきっかけとして地代の値上げを要求されるケースもあるかもしれません。

原則としては、この値上げ要求に応じる必要はありません。

ただ、被相続人が契約した当時はかなり低額の地代であったのが、今の地域の事情などに照らして値上げが相当と考えられる場合もあります。

建物の建て替えをしたい場合

建物が古くなり、大がかりなリフォームや建て替えをしたい場合には、被相続人が地主と契約した当時の契約書を確認してください。

建て替えに地主の承諾を要するという特約がある場合には話し合いをする必要があります。

仮にそのような特約がなくても、トラブルを避けるためには建物の建て替えを地主の耳に入れておきましょう。

建物を売却したい場合

建物を売却して出ていく場合には、いったん建物を相続人名義に変更しなければなりません。

被相続人名義のままでは買主名義に登記手続きができないからです。

この場合に建物の売却に地主の許可が必要かどうかは、地上権が賃借権か地上権かによって異なります。

賃借権には原則として許可が必要となります。

借地権の更新を拒絶された場合

借地権を相続した時に覚えておくと便利な7つのコト3借地権には契約で期限を設けています。

期限が満了した場合に更新を拒絶するには、地主と借地権者がその土地を必要とする事情、これまでの利用状況、地主の立ち退き料の提示などを考慮した上で正当な理由が必要となります。

建物に居住している場合に簡単に更新を拒絶されてしまうと生活に大きな支障が出るからです。

更新を拒絶される場合には弁護士に間に入ってもらうようにしましょう。

まとめ

今回は土地利用権である借地権について解説しました。

相続の際には親族間でもトラブルが起こることも多いものですが、他人の権利が関わる借地権においてもやはり地主との間のトラブルは多いです。

地主との交渉などには借地権の問題に精通している弁護士に相談しながら進めるようにしましょう。

最終更新日 2024年6月30日

この記事の監修者
弁護士・監修者
弁護士法人ひいらぎ法律事務所
代表 社員 弁護士 増田 浩之
東京大学経済学部卒。姫路で家事事件に注力10年以上。神戸家庭裁判所姫路支部家事調停委員。FP1級。

最終更新日 2024年6月30日

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