最終更新日 2024年12月3日
ご相談
Xさん(60代、女性)は、身寄りのないおばが亡くなり、その代襲相続人となりましたが、相続人である別のおばY(70代、女性)の弁護士から、遺産をYがすべて取得するとの遺産分割協議証明書に署名押印するよう求められたため、納得がいかず、当事務所に相談に来ました。
Xさん、Yを除く相続人らは、すでに遺産分割協議書に署名押印済みでしたが、それは、Yから、遺産がわずかであるとYから聞かされたためでした。
Xさんは、そうした経緯にも疑問を持っていました。
当事務所の活動
遺産分割協議成立には相続人全員の合意が必要です。そこで、当事務所は、Yの弁護士に対し、Xさんが遺産分割協議書に署名押印しておらず、遺産分割協議のやり直しを求めましたが、Yの弁護士は、Xさん、Y以外の相続人らが、遺産分割協議書に署名押印しているので、Yに各相続分を譲渡したとして、遺産分割調停を申し立てた(1回目の調停)ため、当事務所は、Xさんらから受任し、調停に対応しました。
調停委員会は、評議の結果、相続分の譲渡を認めませんでしたが、Yの弁護士は、なおも相続分譲渡の主張を譲らず、調停を取り下げるとともに、Yが大部分の相続分を有することの確認を求め、民事訴訟を提起しました。
ただ、かりにYが大部分の相続分を有するとの確認判決を得たとしても、その理由中の判断である相続分譲渡には既判力が及ばないことから、当事務所は、反訴を提起し、相続分の無効確認を求めました。
その結果、Xさんら(当方)は、相続分譲渡の無効を確認する全面勝訴判決を得ることができ、判決は確定しました。
その後、Yの弁護士は、遺産分割調停を申し立てました(2回目の調停)が、なおも法定相続分以上の取得を主張しましたため、調停は不成立となり、審判に移行しました。
活動の結果
その結果、Xさんら(当方)が主張するとおり、各相続人が法定相続分どおり遺産を取得するとの審判(正確には、Xさんが遺産の大部分を取得し、他の相続人に代償金を支払わせることにより、結果的に、各相続人が法定相続分どおり遺産を取得したことになる審判)を得ることができ、審判は確定しました。
Xさんらは、正当な結果に、とても満足された様子でした。
解決のポイント
本件では、「遺産分割協議書への署名押印が相続分譲渡といえるか」、「相続分譲渡の効力が争われる場合、相続分の確認訴訟で足りるか」といった、マイナーな論点が争われ、裁判官も、判断に悩む様子でした。
当事務所は、民法における要件効果論、民事訴訟における確認の利益という基本に立ち返り、厳密に議論することによって、訴訟、審判を勝ち切ることができました。
最終更新日 2024年12月3日