ご相談
Xさん(80代、女性)は、親名義の不動産の1つ(A)にきょうだいの子Y(40代、女性)らが住んでいるのに、その固定資産税まで負担していること、親名義の別の不動産(B)上にある建物を取り壊したいことから、不動産Aを含む不動産をYらが取得し、不動産BだけをXさんが取得するとの遺産分割を希望しました。
しかし、別のきょうだいの相続をきっかけとして、Yらともめていたため、ご自身では解決できず、知り合いの行政書士さんのご紹介を受け、当事務所に相談されました。
ただ、弁護士費用に比べ、Xさんの経済的利益がわずかでしたので、当事務所は、よく検討いただくようお伝えしましたが、Xさんがそれでも親名義の遺産を整理したいとのことでしたので、依頼をお受けしました。
当事務所の活動
初回期日:当事務所は、Yが不動産Aを取得すると、本来代償金(※)をXさんに支払うのが筋だが、Yが不動産B以外の他の不動産を取得するのであれば、XさんはYに代償金を請求しないことも考えうる、と伝え、期日後に、Xさんの了解を得て、調停条項案を提示しました。
※代償金・・・現物を取得した相続人が他の相続人に支払うお金のこと。
第2回期日:Yらは、当初、不動産A以外の不動産は取得したくない、と主張しました。
ただ、調停委員を通じて説得を試みたところ、期日の終盤に一転、取得してよいとの意向に変わりました。
第3回期日:ところが、Yが不動産について自分が住むところ以外いらないとの意向に転じるとともに、Yらの1人が期日に欠席したため、調停を成立させることができず、次の期日に結論が持ち越しとなりました。
当事務所は、次の期日が重要と見て、裁判所を通じ、Yら全員の出頭を強く促すとともに、調停成立後のYの登記申請を司法書士に依頼できるよう、司法書士に登記委任状を準備してもらいました。
第4回期日:出頭を促した甲斐があって、Yらは全員出席しました。
そして、公平の観点から、調停委員会より、Xさんが不動産Bのほかにもう1つ不動産を取得するとの修正後の調停条項案が提示されました。
しかし、Yらの1人が強行に調停成立に反対したため、一時は、調停不成立、審判移行が現実のものとなりかけました。
審判に移行すれば、修正後の調停条項案のとおり審判がなされる見込みではありました。
しかし、審判がなされ確定しても、Yらが取得した不動産について相続登記を申請する保証はなく、かりに相続登記がなされない場合、Xさんが依然としてYらが住む不動産の固定資産税の負担を余儀なくされるおそれがあり、これを避けるため、XさんがYに対し、登記引取請求訴訟を提起し、確定勝訴判決を得る必要がありました。
また、登記引取請求権を発生させる前提として、Xさんが共同相続の登記を申請する必要もありました。
つまり、審判の場合、Xさんが余計な手間暇費用を負担するおそれがあるばかりか、Yも応訴など少なからず手間暇費用を負担するおそれがありました。
そこで、当事務所は、Yに対し、同じ解決を図るのであれば、調停成立の方がお互い手間暇費用がかからないと繰り返し説得したところ、期日の終了予定時刻を大幅に過ぎた段階で、ようやく調停成立でよいとの意向を示しました。
そこで、すぐさま裁判官をお呼びし、Yらの気が変わらないうちに、無事、Yの登記委任状への記入、調停成立の運びとなりました。
活動の結果
Xさんは、途中、若干やきもきされたものの、4回の期日で、ほぼ当初の希望どおり遺産分割することができ、とても喜んでおられました。
解決のポイント
本件は、通常の遺産分割と異なり、Yらの二転三転する態度、かりに不動産を取得しても登記申請しないおそれに対応する必要があり、解決の難度は高いものでした。
ですが、当事務所は、これまでのノウハウをもとに、早めに現実的な調停条項案を示すとともに、そうしたおそれに先回りして対応した結果、4回目の期日で調停成立を実現するとともに、相続登記を経ることができました。
最終更新日 2024年8月28日
最終更新日 2024年8月28日